サシバの「しーちゃん」
ここ数日の沖縄つながりで、懐かしく思い出したことがありまして。
『サシバ』という鳥をご存知でしょうか?差し歯でなく(笑)
タカと同じ種類ですが大きさは50cm前後ほど。翼を広げても1mそこそこの中型の猛禽類で、環境省のレッドリストに載っている絶滅危惧種。
この鳥は夏に日本の本州に渡ってきて繁殖し、冬になると東南アジア辺りにまた渡って越冬するのですが、年中温かい沖縄にも冬になると飛んでくるのです。
でね、ある冬の日の夜遅く、夫君がでっかい段ボールを抱えて帰って参りましてな。
「寒さで動けなくなったみたい。事務所に置いておいても寒くて可哀想だから、一晩だけここに置いていい?」って。
開けた段ボールの中には、底にぺしゃ~って潰れたようになったサシバがおりまして…。
夫君の仕事は自然関係なので、時々こうして事務所に野生動物が持ち込まれたりするんですけれども、いつもなら当然そのまま獣医さんの所へGO!なのです。
が、その日はどうやら随分遅い時間に持ち込まれたようで、今から獣医さんへGO!は無理。
でもって沖縄の冬というのは、家屋の中はコンクリート造りゆえ案外足元が冷える。ひと気のなくなった事務所の、ましてや床なんて結構ひえびえなのです。
ということで、一晩だけ我が家で預かることになりましたので、サシバの「しーちゃん」とネーミングいたしました。すぐ名前つける私。
ただ、この時点では一晩持つかどうか…くらいに弱っておりましてね。
段ボールの底で羽を広げたまま本当にぺしゃんこで、それでもまあ出来るだけの事はしてみようと思い、まず寒さ対策として大きなビニール袋に最弱にセットした電気毛布を入れて、その上に薄いタオル、その上にしーちゃんをそっと乗せまして(もう抱いても全く無抵抗だったのよ)。
確かこの時点で夜10時過ぎだったと思うのですが、それから朝まで3時間おきに、液状ブドウ糖を注射器(針ついてないやつね)をくちばしを少し持ち上げて注入。←こんな事もあろうかと、以前獣医さんから頂いていたらしいです。どんだけ野生動物持ち込まれてんだ(笑)
ちなみに3時間おきに起きてブドウ糖注入していたのは私です。夫君はぐーすか寝てました。チッ。
中型っていってもタカ類の猛禽ですから、くちばしや爪がとっても鋭い。ガリッなんてやられたら流血沙汰確定よ。
「しーちゃん、ごめんね!痛くないからね!大丈夫だからね!これ元気出るやつだから!お願いだから噛まないでね!」って恐る恐るやっていたのですが、とにかく無抵抗。
それでも吐き出しはしなかったので、そのまま続けて翌朝。
段ボールを開けると、あれだけぺしゃんこだったしーちゃんが箱の中でビシッと立っておりました!万歳!!!
………あ、でもこれはもしや攻撃されるのでは?と少々ビビりましたが、しーちゃんは私をじっと見てるだけ。
試しに「ブドウ糖いる?」と注射器を見せると、何ということでしょう!ちゃんと口を開けるではありませんか!ビフォーアフター風に読んで頂ければw
しかも何度か注入して、いらなくなると口を閉じて横を向くんですよー。
ウソじゃないです。盛ってもないです。ホントに本当。
そんなこんなで、その後ちゃんと獣医さんの所でしっかり養生したしーちゃんは、無事に沖縄の森へと飛び立って行きました。
多分しーちゃんはサシバの中でも、とても賢かったのだと思います。
実はその後、もう一度サシバを一晩預かった事がありまして、でもその子は最初から最後まで全くの野生児でした(笑)
ついでにもう一つ賢い証拠として、一晩中ブドウ糖をあげ続けた私の前では全然大人しいんですが、ぐっすり眠って起きてきた夫君を見るなり、攻撃こそしなかったけど羽広げて「シャーッ!」ってめちゃくちゃ威嚇してましたからねwww
鋭いけど可愛くもあるでしょ。
サシバが絶滅危惧種になるまでに少なくなった原因のひとつに、里山開発があります。
サシバだけじゃなくて、野生動物と共存できる環境作りは、私たち人間にとって、これからとても大切で重要な事項なんじゃないかな。
蛇足。縄文のこどもに名前つけたお話。