みそらゆく。

わたしごきげんプロジェクト。(私がご機嫌でいるための計画。そのまんま)

ワカちゃん

私には姪っ子が3人おりますが、そのうちの一人、ワカちゃんの誕生日がもうじきなのです。

去年までは近くに住んでいたので、お年頃女子らしく「お洋服が欲しいナ!」という彼女と一緒に買い物に行ったりしていたのですが……今年はどうしようかなぁ?

 

とワカちゃんの事を考えておりましたら、ふと思い出した事がありまして。

 

博物館に勤めていた頃、私は遺物の保存処理という仕事をしておりました。

ごく簡単に言うと、遺物をなるべくそのままに保つ処理を施す作業です。それ以上朽ちないようにする・劣化しないようにする・壊れないようにする、みたいな感じ。

薬剤を使ったり、時には医療用のメスなども使うので、支給された白衣を着て作業場に行こうとすると、「院長回診のお時間だ!」とか言われてました(笑)でも作業服とか薬剤用エプロンとかしてると廊下ですれ違いざまに「よくそんな汚い恰好できるわねぇ!私は無理だわぁ!」とか総務のお局に嫌味を言われたりとかもありましたけど…。

処理の対象は遺跡から出土した鉄器や木器(土器だけは別部署)、修復が必要な文化財や、時には解体できない遺物のX線撮影なども。中身は色々ありましたが、骨もそのうちの一つでしてね。

 

ある日、縄文遺跡から出土した人骨が持ち込まれました。

骨のみじゃなく周囲の土も一緒に掘り出して、その土ごと骨も保存処理すると聞いていたので、さぞ巨大なブツが来るだろうと思っていたらば、到着したのは幅90cm・長さ120cm程度の小さい箱。

蓋を取ると、中には小さな、多分4、5歳くらいの子供の人骨が丁寧に埋葬されて眠っておりました。

土ごと掘り出したのは、頭部分がとても脆くなっていたためのようで、その日から毎日少しずつ少しずつ、優しく筆や刷毛で薬剤を骨と土に浸み込ませていく作業が始まりました。

 

で、丁寧に少しずつ=めっちゃ時間がかかる、という事なのですよな。

つまりこの子供の人骨と暫くの間は毎日一緒にいる、という事でもあるのですよな。

いつも一緒にいるものって愛着湧かない?私は湧くんだよ。

で、一緒に作業していた仲間も多分愛着湧いたんだと思うんだ。

折しも季節は春。

私たちは毎日替わりばんこに花を持ってきてはその子の枕元に飾り、一日の始まりには「おはよう!」と言い、作業を終えて帰る時には白い布を布団のようにかけて「おやすみ~」と言い。

そんな事してたら当然、名付けたくなるでしょ?

でも幼なすぎて骨からは性別が分からなかったので、男の子でも女の子でもいいっていう名前が良いのではという事になり、私が「ワカちゃんっていうのはどう?」と提案したらば、それいいね!という事になり。

名前が付けば更に愛着が湧くというもので、私たちは日々「ワカちゃん」を可愛がりながら作業を進めて数週間後、無事処理は完了しました。

 

ワカちゃんはその後、すぐに展示はせず一旦収蔵庫入りとなりました。

が、およそ2年後、展示品入れ替えを機に展示室にお目見えした時には、久し振りの再会にちょっと涙出たよね(入れ込み過ぎだ・笑)

 

 

姪っ子の名前はワカバで、周囲は皆「ワカちゃん」と呼んでおります。

彼女の名前が決まった時、すぐさま縄文のワカちゃんを思い出し、今度は(というのも、おかしなものではありますが…)しわくちゃのバーサンになるまで元気に生きろよ!!と強く願いましたわよ。

 

お陰様で平成のワカちゃんは、姉妹の中でもダントツで背が高く骨太で、只今元気いっぱいなJKライフを満喫しておられるようです。良きかな(笑)

 

何か彼女に関連する写真でも…と思ったけど何もなかったので、彼女たちと一緒に旅行した伊香保からの景色でもどうぞ☆彡